小児の近視は薬で治せるのですか
前述した低濃度アトロピン点眼や保険診療でも使用できるトロピカミド点眼は近視抑制には一定の効果がありますが、近視を元に戻す薬はこれからの課題であります。点眼以外で太陽光に含まれるバイオレットライトが近視抑制に効果があることが証明されてきています。またクロセチンのサプリメントも内服で近視抑制に寄与することがわかっています。生活習慣では屋外活動時間が長い子供の方が近視進行が抑制され、コロナ禍で自宅時間が延びた際に近視児童が増えたことは記憶に新しい事実です。
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現在、小児の近視進行は世界的な問題となっており、多岐にわたる治療法が開発されてきています。有名なところでは低濃度アトロピン点眼やオルソケラトロジーは単独または併用により近視の進行抑制に効果があります。ただし長期的な予後が実証されておらず、自費診療の扱いになります。その他に適切な度数の眼鏡やコンタクトを作り直すことも近視抑制に影響します。近年では多焦点コンタクトレンズを用いて小児の近視抑制に効果があったとする報告も増えています。最も新しい治療法としては中国で開発されたレッドライト療法があります。こちらに関しては後述します。
前述した低濃度アトロピン点眼や保険診療でも使用できるトロピカミド点眼は近視抑制には一定の効果がありますが、近視を元に戻す薬はこれからの課題であります。点眼以外で太陽光に含まれるバイオレットライトが近視抑制に効果があることが証明されてきています。またクロセチンのサプリメントも内服で近視抑制に寄与することがわかっています。生活習慣では屋外活動時間が長い子供の方が近視進行が抑制され、コロナ禍で自宅時間が延びた際に近視児童が増えたことは記憶に新しい事実です。
レッドライト療法が最新の治療法になります。1回3分、1日2回の赤色光を覗き込むだけで近視進行予防効果が得られます。また特記すべきこととして一部の強度近視の方は治療を継続することで近視が改善した報告もあります。当院でもレッドライト療法に関して今後の新しい続報や安全性の詳細を注視していきます。
眼鏡を頼らずに裸眼での視力にこだわる場合、近視を生じさせないことが大事です。小学生以降に近視が進むスピードが上がりやすいのでこの時期に定期的に検診して疑われる場合は積極的な近視抑制の治療を推奨します。
また弱視(視力が育たないこと)予防の観点からは視力回復の臨界期は8歳前後のため、学校検診などで視力に引っかかる際は必ず眼科医に相談をお願いします。
近視の進行は20歳前後で止まって視力は安定することが一般的ですが、近年大人になっても近視が進行する「late onset myopia」という概念が提唱されています。レーシックなどの治療を受けたのにまた見えにくくなる現象にこの大人になっても進行する近視が関与しています。
当院では子供の状況や屈折の精査結果を踏まえて段階的に①生活指導、②保険診療内での治療、③自費診療まで広げた治療法を相談しながら提案していきます。
具体的に生活指導では屋外活動の確保や近点距離での作業を避ける事などを詳しく説明していきます。保険診療でできる近視抑制から最新の自費診療(レッドライト療法やオルソケラトロジー、低濃度アトロピン点眼等)までを状況に応じて最適な治療選択肢を相談しながら決めていきます。
近視が進行する原因が環境要因(ゲームをする時間が長い、等)なのか遺伝要因(親が強度近視である、等)のどちらなのかも大事な要素ですのでお子さんだけでなく、ご両親からもヒアリングしてオーダーメイドの近視治療を一緒に考えていきたいと考えます。
私自身は大学院で基礎研究として病理学を学んでいた時にラットを用いた近視進行を抑制する治療薬の開発に従事していました。近視が進むことは眼における様々なリスク(白内障の進行、緑内障の併発、網膜剥離の可能性、黄斑変性の併発、等)が上昇するため近視を進ませないことを重要視しています。近視が進行すると眼軸長(眼球の長さ)が伸びて長眼軸になっていきます。
当院では長眼軸の眼において正確に眼軸長を測定する最先端の医療機器を導入し、近視進行の変化を細かくフォローしていきます。子供の近視が気になる親の気持ちは親として共感できますので些細なことでも遠慮なく相談ください。